すべての接客業が対象!『カスハラ対策義務化』を解説

2025年に成立した労働施策総合推進法の改正により、企業にはカスハラ防止措置を講じることが義務付けられ、2026年10月から施行されます。
特に製パン・製菓業界をはじめとした小売・飲食業では、顧客と直接接する機会も多く、従業員がカスハラ被害を受けるリスクも少なくありません。
本記事では、カスハラ対策が義務化された背景や企業に求められる対応、違反時のリスク、実践できる具体策について解説します。
義務化の背景
厚生労働省の調査によると、過去3年間に労働者から「顧客等からの著しい迷惑行為」(カスハラ)の相談があったと回答した企業は27.9%にのぼり、2020年度の調査から8.4ポイント増加しました。
また、実際にカスハラが発生した企業からは、「継続的・執拗な言動」「威圧的な言動」「精神的な攻撃」などが代表的な事例として報告されています。
そもそも、カスハラとは?
業種や業態により態様は異なりますが、厚生労働省の指針では、「顧客等による社会通念上許容される範囲を超えた言動により、労働者の就業環境が害されること」をカスハラとしています。

しかし、商品・サービスや接客態度などに対しての不満など、クレームの中には業務改善や新たな商品開発などにつながる内容もあります。カスハラ対策を行う前に、線引きをしっかりと理解しておくことが重要です。
判断のポイントは次の2点です。
①要求内容に妥当性があるか
例えば、「商品に異物が混入していた」「注文内容と違う商品が渡された」という場合の返金・交換要求は正当なクレームといえます。
一方で、「ストローを入れ忘れていたので自宅まで届けろ」など、企業側の対応範囲を逸脱した要求はカスハラと判断される可能性があります。
②手段や態様が社会通念上相当か
仮に要求内容が正当であっても、大声で怒鳴ったり、従業員を長時間拘束したり、SNSへの投稿をちらつかせて脅したりといった行為はカスハラに該当する可能性があります。
例えば、「返金しないならネットの口コミに悪評を書き込む」という発言は、要求実現のために威圧的な手段を用いているため、カスハラと判断されるケースがあります。

どのような対策が必要?
厚生労働省は、事前準備と事後対応の両方を求めています。
<方針を明確化して、従業員へ周知する>
まず重要なのは、「会社・店舗は従業員を守る」という姿勢を明確に打ち出すことです。
例えば、次のような対応などが考えられます。
- 朝礼での周知
- 社内報への掲載
- 就業規則への明記
- 研修の実施
また、店内やホームページに「当店では従業員への暴言・威嚇行為などの迷惑行為をお断りしています」などの掲示を行うことも有効です。従業員だけでなく、お客様にも店舗の方針を示すことができます。
日仏商事オリジナルの店内掲示用ポスターを無料でダウンロード
<相談体制を整備する>
すでに設置している「パワハラ相談窓口」「セクハラ相談窓口」にカスハラ対応を追加する方法でも問題ありません。
重要なのは、「困ったときに誰へ相談すればよいか」を全従業員が理解していることです。
特に学生アルバイトやパート社員にも周知しておきましょう。
<迅速かつ適切な事後対応を行う>
カスハラが発生した際は、「事実確認」➡「被害者フォロー」➡「再発防止」を速やかに行う必要があります。
対応が担当者によってバラバラにならないよう、「クレーム対応マニュアルの整備」や「記録様式の統一」、「エスカレーションルール※の設定」も重要です。
※上長への報告・相談・引き継ぎの基準や手順
また、次のような基準をあらかじめ定めておくと、現場担当者の負担軽減につながります。
- 脅迫やSNSでの誹謗中傷があった場合 ➡ 本部へ報告
- 身の危険を感じる場合 ➡ 警察へ通報
- 悪質なケース ➡ 顧問弁護士へ相談
違反した場合の罰則は?
義務違反に対して直ちに刑事罰(懲役や罰金)が科されるわけではありません。
ただし、行政措置として「報告徴求」「助言」「指導」「勧告」の対象となります。改善が認められない場合には企業名が公表される可能性があります。
企業名が公表されれば、取引先や求職者、消費者からの信用低下につながることも考えられます。実務上は、法的な罰則以上にイメージへの影響が大きいといえるでしょう。
まとめ
カスハラ対策の義務化は、単なるコンプライアンス強化ではなく、従業員と顧客がお互いを尊重しながら健全な関係を築くための取り組みです。
2026年10月の施行に向けて、制度対応だけでなく、従業員を守るための組織づくりと企業文化の見直しが求められていると考えます。
□参照元